あおり運転事故の判決について

東名の、あおり運転事故の判決。皆さんは、どう感じられたか判りませんが、私には何とも言えない違和感がありました。

 昨日の産経抄で、その違和感が何なのかが、少し分かったような気がします。

「産経抄抜粋」

 危険運転を処罰する法律の条文にしても、用いる側の想像力の乏しさが透けて見える。東名高速道路で昨年6月、石橋和歩被告が度重なるあおり運転で後の車を止め、夫婦を死に追いやった事件である。懲役18年の判決にもなお、わだかまりを拭えずにいる。

 速度ゼロの状態で招いた事故を、判決は危険運転致死傷罪の要件となる「重大な危険を生じさせる速度」とは言えないーとした。時速100キロで流れる車列の中、無理に止められた夫婦の目に何が映ったか。脇を走り抜ける車は、凶暴な鉄の塊そのものだったろう。

 死と背中合わせの危険な行為さえ、裁けない「速度ゼロ」の壁がある。懲役18年が結果の重さを映した判決だとしても、遺族にとって失われた命の重さに見合う量刑とは言えまい。新たな危険運転を生まないためにも法の破れ目を縫い、厳罰を構えていくほかない。

 昨年の交通安全川柳の一句を思い出す。<事故ってさ「起こす」ではなく「防ぐ」もの>。法の備えと、車間距離にも似た心の余白と。次の加害者にならない心掛けが、被害者の無い明日を生む。涙の上に浮かぶ交通社会では、「話が逆」だろう。【終わり】

残されたご家族の事を思えば、何ともコメントが難しい事件でしたが、別に感情的になって、ことさらに「この男は許せない」等と書くつもりはありません。

しかし、これが危険運転致死傷罪であるかどうか審議されたポイントが、「速度ゼロ」であった事に、法の不備を感じたのです。

 確かに、車は停止していましたが、それは、100㌔をゆうに超える車が通行している高速道路の追い越し車線。

 前をふさがれた車は停車させられ、後部座席に乗っていた旦那さんの胸倉をつかんで、引きずり降ろそうとした石橋被告。産経抄でも書かれているように、その時点でも多くの車は、すぐ傍を高速で通り過ぎていたと思われます。当然、普通の神経を持った人間なら、追突される危険性くらいは、充分に認識できたはずです。

 今回の事故に該当する危険運転致死傷罪の2条・3条には、「人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」とありますが、この項の「重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」では、動いていない車は該当していません。

  この項の文章は、「重大な交通の危険を生じさせる行為」とすべきだったのです。ですから、この裁判では「危険運転致死傷罪」を前面に出して戦うべきではなかった。

 しかし、この裁判では、予備的起訴として、より重い「監禁致死傷罪」という二次的な審理が出来る起訴になっていますから、今回の結審はそれが幸いしたのではないかと思います。

 「監禁」とは、閉鎖空間にこだわらず、一定の場所からの移動が不可能か、著しく困難な状態を言います。

 高速道路の追い越し車線で、被害者夫婦は、胸倉をつかんで恐喝する石原を振り切って、子供2人を連れて、高速道路から退避出来るか?つまり、進行方向が決まっている高速道路上で、前方をふさがれ停車させられた状態は、監禁に相当するのではないか?という事です。

 18年という量刑が出ましたが、弁護側が上告すれば、次では、より重い求刑になる事も考えられます。

 これからどうなるか判りませんが、このような痛ましい事故が二度と起きないように、より解釈の自由度が高い法の整備が必要だと感じた事件でした。

 

 

あおり運転事故の判決について” への1件のコメント

  1. 亀レスですが,

    当然,私も違和感を感じました.文章で書かれた法というものの限界も,ひしひしと感じています.

    こちらはいわゆる理系人間ですから,定義は出来れば関数でスパッと行く方が好きです.細かい言葉遊びは大嫌い.

    ただ,「法に正しく」さばくためには,感情に流されずに細かく正確に言葉を解釈しなければならない.そして,法の文言に問題があるのなら文言自体を修正するしかありません.

    寝るけーのさんの言うとおり,
    >この項の文章は、「重大な交通の危険を生じさせる行為」とすべきだった

    とした方がいいと,私も思います.
    しかし,
    >より解釈の自由度が高い法の整備が必要

    というのも分かるんですが,これをやりすぎると,今度は「法匪」がはびこることになる.なかなか難しですね.

    最後になりますが,不本意な形で命を失うことになった被害者に,ご冥福をお祈り申し上げます.

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